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ピッケル



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かなり長文になります、お付き合いのほどお願いします。


遡ること2019年秋・・・

tabiさんからピッケルメンテの依頼が届きました。

そのピッケルはお父様の形見の品です。

それがトップ画像です。

形見の品のメンテなんて言う大役、大丈夫か俺??
って一瞬躊躇する。

とりあえず物を見て判断と言う事で受け取りました。


木工製品のメンテなら多少知識あるのだが
金属はド素人なのです。



結構な錆です。

赤錆に侵食されている、たぶん赤錆の下には黒錆もあるだろう。

とりあえず出来るだけやってみるか! ってことで引き受けることにしたのです。



まずは、このピッケル君は何者?

ってことで正体を出来るだけちゃんと把握しようと調べ始めます。


CHAMONIX Simond Super E
 ※たぶん前期モデル


1960年~1970年代に製造されたモデル

と言う事は、ほとんど同級生って事になります。
前期モデルならちょいっパイセンかな。


この時点で、ちょっとやばっ!! ってなるわけです。

手汗じわ~~っと出てくる感じ(汗


tabiさんの話では、このピッケルには素敵な物語がある事が分かった。

日本を代表する冒険家との関わりとかね。

大切な形見なので、その辺は伏せます。


責任重大なのです、想像を超える貴重なものなのです。


更に調べます。

日本人の体形にはこの”E”が適したモデルだったようです。
何故かと言うと、この”E”は本来欧米の女性向けのモデルだったようです。

そうなんです、小柄な日本人は欧米人の男性向けより女性向けの方がサイズがしっくりきたのでしょう。


さ~~~て困りました。

ココからは金属メンテの基礎を勉強です。
なにせド素人ですからね。

並行してピッケルのメンテをしている方を探します。

失敗出来ないから、精通されている方を参考にするのがベストなわけです。
そして出来れば道具に対する愛情が感じられる方。

1ヶ月ほどネットをうろちょろして辿り着いたサイトがありました。

もうね、絶対にこの方に聞くしかない!!
と、思える方で、イメージドンピシャな方だったのです。

実際に近い年代のピッケルをメンテされてるし、何よりいろいろなモノづくりに精通している。

日本を代表する鍛治屋さんに自ら足を運び、ピッケルの作り方を聞き、その教えに従いメンテしている。
これ、絶対に正解ですよね!

サイト名を出すとご迷惑をかけるかもしれないので出しません。

幾つもの貴重なアドバイスを頂いたのがkさん。

この方の道具への愛情は普通じゃない!
ご本人はいたって普通だと言うと思いますが。

自分もそこそこ道具と言う物へのこだわりはもっている。
道具への愛着も大切にしている。
一つ拘ると結構深く深く入り込んでしまうが、この方の次元は想像を超えています。

当初ネットで調べていたやり方でやらなくてよかった。
思い切って連絡を取りアドバイスを求めて大正解でした。



物がものだけに貴重過ぎて、初めの一歩まで時間がかかりました。


部屋で眺め

どーーーする?

こーーーする?

手順や段取りの擦り合わせを繰り返します。

だって、金属はどのように変化してくか分からんのだもの(汗


そして1月中旬、覚悟を決め開始です。


一気にゴールを目指さず、少しづつ少しづつです。

どうしてもゴールを早く見たくなりますが、これは木工と一緒です。

ペーパーの番手を変えて徐々に磨くと表情が変わります。
塗装も焦って厚塗りせず、薄く塗り磨いてを繰り返し、何層にも重ね磨き上げる。
ある段階から一気に表情が変わっていくのです。

たぶん、ココは金属も一緒だろう、と思い進めます。



慎重に慎重に進めます。


イイ感じ! って思ったり
ん~~ って思ったり

何処まで削って良いのか、その加減が分からないのでやり過ぎないよう慎重に、です。


もう少しやっても大丈夫かな? ってぐらいでやめる事にしました。
これ以上は勇気がなかった(汗


グリップは表面の汚れを取ると、至るところに傷があることが分かりました。
一皮むき全体を磨けばこのぐらいの傷は小さくなる。
もしくは目立たなくなる。

でも・・・
この傷にもいろいろ物語があるかもしれないから
普通の木工製品の化粧直しほど磨くことはしない、そう決めた。
全体的に軽く整える程度にします。

まとまった時間が取れないので少しづつ少しづつ1時間~2時間程度
時間が取れる時にやる感じで進めました。



それにしても、鉄紛って結構出るのです。
想像以上に指が真っ黒になる!
ほんと、真っ黒になるのです。
おまけに、指が鉄臭い!!

一度親指の皮がベロってめくれた。
こんなに大きな捲れ方したの久々かなってぐらいの大きさです。
痛いのなんのって(汗


鉄を磨くって、木を磨くのとは違う楽しさがある事を発見!
磨いていく中での変化は鉄と木では全く違うのです。(当然か・・・)

素直に新たな発見が楽しい、これまでにない知識を得る楽しさもあります。

もうね夢中になったわけですよ。

でも焦ってはダメ
夢中になりつつもじっくりと
なかなか、この気持ちの加減が難しかった(笑


昨年11月に立ち寄った大町山岳博物館で偶然目にしたスイス製のピッケルがお手本です。
偶然だったけど、今にしたら導かれたのかもしれない、なんて感じたりします。
とても不思議です。
あの輝きや雰囲気に近づける! そこを一つの目標にじっくりとです。


指先でなぞった時のツルツルな感じ、金属ってこーーなんのか!!

これだと、金属の種類によってその変化は違うだろうから、その変化も楽しい。
黙々と磨き続け、あっ変わった! って時気持ち良いのです。



イイ勉強になりました。
貴重な経験です。

何より失敗しなくて良かった、マジで!!!


しっかりとした知識と技術がある人がやればもっとビカビカになるだろうけど
今の自分にはこれが限界です。




before
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after
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before
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after
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after
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after
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after
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before
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after
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皮のヘッドカバーは残念ながら修復出来ませんでした。
劣化し過ぎて繊維が破断してて再生出来ないと判断。




持ち主であるtabiさんの期待に応えられたか分からないけど
まぁまずまずなんじゃないかな。 自己満だな(爆





最後に改めて・・・

貴重なアドバイスを頂いたkさんには本当に感謝です。
ありがとうございました。



ピッケル_c0220175_17555277.jpg




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以下は備忘録として・・・

ますは、ブラッシングで表面の錆を落とします。
そして、重曹をジェル状態にし、全体に塗りクリーニングします。
付け置きはせず少し置いてすぐに流します。
この時にグリップの汚れも落とします。
なにせ60年近い汚れですからね。

当初は化学の力を借りて、錆は錆落とし剤であらかた落としてしまえ!
って思っていたのですが、kさんの助言に従い全て手作業で行きます。

平目鉄やすり(工作用)で特に頑固な赤錆を軽く落とします。
ギザ部分やピッケル部分も頑固な錆が目立つので
削り過ぎないよう注意しながら落とします。


そしていよいよ磨きをスタートさせます。
耐水ペーパーを使いひたすら磨く!!

何故かと言うと・・・

kさんの助言ですが、鍛造物は思ったよりも低温で組成が変化する為に
一番効果的かつシンプルなのが耐水ペーパーで磨くこと!
熱を持たせないように水に濡らしながらやるのが大切!
と言う事だったのです。

サンダーなどの電動工具等を使うと焼きを戻してしまう。
そうすると、見た目は分からないが柔らかくなってしまい使い物にならなくなってしまう。
だから、耐水ペーパーでじっくりと!
と言う事のようです。


耐水ペーパーは売るほどあります。なので十分やれます。
あとは自分の技量と気持ちのみ(汗


まずは#240→#320です。
次は#600です。

ココまでで赤錆は大分落ちました。
でも、赤錆の下に隠れていた黒錆が頑固なまでに居座ります。

この黒錆は完全には除去できない気がする。
結構根が深そうで、これを削るには本体を大分傷つける事になってしまう。

加減がむずい!!!!!
でも、やはりこの黒錆気になる。
悩みます。

やはり・・・と言う事で#240に戻ります。
どうしても一気に削りたくなりますが、そこはグッと我慢です。

グリップも木目に沿って磨きます。
木の磨きは慣れたもんです、でも油断は大敵。

そして再度#600で磨きます。
当然グリップも整えます。

#800→#1000まで行きます。

ん~~、なんかここまでの出来が想像と少し違う

耐水ペーパーで熱を持たないように水に濡らしながら磨くと
磨き終わった後に、薄茶色の薄い膜みたなのが張るヶ所が出来る。

金属に含まれる何かが表面に湧き出てきている? そんな感じがした。
もしかして錆止め効果がある何かなのか?
もしや水に濡らしすぎか?

仕上がり感いまいちなので#600に戻る事にした。

慌てず、じっくり、#600→#800→#1000と進めます。

錆の根が深いところは完全に除去できない。
その周辺の少し曇ったような色が変わった個所も除去できない。
でも、全体的な輝きは良い感じだ!!

#1500で丁寧に磨き終え、最後に仕上げの磨きを実施する。


さて、最後はグリップの塗装です。

当初は近年ハマっていた米粉オイルを使おうかと思っていたが
ココはやはり亜麻仁オイルだな。

木目に鉄紛がめり込んでいるので、木目に沿ってペーパーを掛けます。


亜麻仁オイル1回目。

全体に塗ったあと、少しおいてからどのぐらい染み込んで行くかチェックします。
予想よりも染み込むのが確認出来た。
ココで一度キッチンペーパーで余分な油を拭き取ります。

そして乾燥です。
念には念をで24h乾燥させます。


亜麻仁油2回目です。

当然1回目ほど染み込みません。
全体的に塗ったら、すぐキッチンペーパーで全体が馴染むように軽く磨きます。
余分な油も拭き取ります。

はい乾燥です。
今回も24h乾燥させます。

何と言っても、木はオイルをしっかり浸透させ馴染ませる事で表情も変わるし
何より道具として長持ちするのです。
何と言っても、このピッケルは何時振りだ?ってぐらいのメンテですからね。
ちゃんとオイルフィニッシュすれば、間違いなく現役でも使えるだろうしね。


そして最後、亜麻仁オイル3回目です。

同じように全体に塗ったら、今度は耐水ペーパー#800で木目に沿って優しく磨きます。
こうすることで木目に沿ってしっかりとオイルが行き渡るのです。
一通り磨いたら、キッチンペーパーで拭き取りフィニッシュ!!!!!


1w乾燥させ、最後にもう一度仕上げの磨きと錆止めを少し塗り完成!!!


延べ時間 :16.0h  ※オイルの乾燥時間を除く
実施日数 :12日間

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Commented by omikeomike at 2020-03-21 09:20
う~ん、我が家の自転車のサビ落としもお願いしたい!?(~0^)
Commented by とくいち at 2020-03-21 11:54 x
omikeさん
ママチャリは受け付けておりません(笑
名品のみとなります、ご了承ください(爆
Commented by tabi at 2020-03-22 09:35 x
とくちゃん、軽い依頼だったのですが
ここまで・・・(汗)
本当にありがとうございました!!!
仕上がりの美しさには感動しています。
しかも、サンダー仕上げかと思っていたのですが
すべて手作業とは。。。本当にお疲れ様でした。
父もすごく喜んでいるはずです!
天空の峰を甦ったピッケルとともに歩いている事でしょう。
我が家のリビングに飾らせていただいていますが
これ眺めながら飲むお酒は格別でとても美味しいです!
昔、父と登頂した槍ヶ岳のピークなどを思い出しながら
楽しませていただいています!
本当にありがとね!
写真の鹿田も「とくちゃん、悪いね!」って
ウィンクしているみたいです。
Commented by とくいち at 2020-03-22 14:50 x
tabiさん
サンダー使ってたら取り返しの使いない大失敗に繋がっていたと思います、考えただけでもゾッとします。
槍のピーク登頂したことあったんですか!!
そりゃオトンついていけないわけだよ(笑
このピッケル、一度山に連れてってあげたいですね。
by FF-Tokuichi | 2020-03-20 18:03 | Carft | Comments(4)

フライフィッシングにまつわる・・・あれこれ。


by とくいち